新しいタイプの音楽活動。

 
 
この数年の間に、
様々な楽曲制作のご依頼やご相談を振り返ってみて、
劇的に変化してきているのは、
 
安定した収入を得るための仕事と、
音楽活動を同列で両立して活躍している人が
増えてきたことです。
 
 
趣味としての音楽ということではなく、
あくまでも音楽も本業として、です。
 
 
ちょっと前であれば、
音楽を生業とするということは、
音楽のみで生きていくということであり、
他の仕事をするということは
音楽から足を洗う時という認識でした。
 
 
音楽で食べていく=メジャーを目指す
という動き方が当たり前だったわけです。
それがこの5年~10年でものすごく変化しました。
  
 
音楽のみで食べていくことそのものにはこだわらず、
音楽での表現、活動に重きを置きながら、
もうひとつの本業で収入を得て、
それを音楽活動に予算として
投入していくという在り方です。
 
 
小説家などでも
同じような動きが見られますね。
本業と執筆活動の両輪で、
作品をリリースしたり活躍する人が
増えてきているそうです。
むしろ最近の出版社などは、
専業の作家よりも、
他に本業を持っている作家の方が
歓迎されるほどだといいます。
 
  
経済的な面で
すでに安定している小説家の方が、
仕事をオーダーしやすい
ということもあるんだと思います。
他に安定した収入があれば、
取材力も変わってくるでしょうし、
冒険的な作風にも挑戦出来るでしょうからね。
 
これは音楽の世界でも同じ事が言えます。
 
リアルなところで
レコード会社やプロダクションなど
会社側の視点で見れば、
本業が音楽だけである場合は
毎月毎月オーダーする
仕事量を 気にしなければいけないですし、
人と人のやりとりでもあるわけで、
月にこれぐらいのギャラ(給料)なら
食っていけるかなといった
会社が社員を養うような感覚で、
レコード会社はアーティストを養い、
プロダクションはクリエイターを養う
というような傾向になりがちでした。
 
 
ところがこの構造が少しずつ崩れていきます。
アーティストやクリエイター側が
このパワーバランスを
嫌ったということもあるでしょうが、
インターネットやテクノロジーの進化によって
セルフプロデュースが可能な時代になったことも
大きいでしょう。
 
 
予算さえあれば、
どんな表現も実現出来ますし、
アイディア次第で人気を博すことも、
収益を上げることも十分に可能なわけです。
音楽以外ならYouTuberなんて
とてもわかりやすい事例ですよね。
 
 
じゃあその予算をどこから捻出するか。
安定して収入を得られる
「もうひとつの本業」からということになります。
 
 
デザイナーでありながらクラブDJ、
美容師でありながらダンサー、
プランナーであってアーティスト、
設計士でありつつも作曲家だったり、
 
「本業+本業」のパワーで
活躍する人が増えてきたことは、
この数年で非常に印象的な出来事です。
 
昔は二足のわらじと言われて、
実のところあまり歓迎されませんでしたが、
時代の変化によって、
ライフスタイルの根底が 変わってきた
と言えると思います。
 
 
音楽活動というものは
何かとお金が掛かるものです。
研究材料としてのCDや配信音源、
制作機材やレコーディング費用、
PVの制作費やサイトの運営費、
ライブやイベントなどのブッキング、
チケット、衣装代などなど…
 
でも、もうひとつの本業から
予算を捻出できれば、
これらの支出もたいしたことはなくなります。
楽曲制作にしてもレコーディングにしても
昔よりは遙かに安く形に出来るわけですから。
 
 
ただ、先日のコラムでもちょっと書きましたけど、
何でもかんでも安く安く! 無料で! みたいに、
異常に価格が暴落していたりする
いろんなコンテンツがありますが、
まったく論外です。
 
予算を掛けずに、
ましてやタダで収益を得たり 人気者になれるなら
誰も苦労しません。
それが正解なら
みんなとっくに成功しているはずです。
 
 
音楽の世界も、文芸の世界も、
美術の世界も、映像の世界も、
才能の世界は
先行投資がモノを言う世界です。
というよりも先行投資は
宿命だと言えます。
 
良い筆をそろえ、良い素材を買い、
良い作品を用意して、
はじめてチャンスが訪れ、人が集まってきます。
時間が掛かってもそれは貫くべきだと思います。
それをやらずに焦って、
予算を掛けずに活動したところで、
人の目はこちらを向いてくれないでしょうからね。
 
 
自分が不得手なものは
早々に見切りを付けないと、
例えば動画を作るのに、
素人なのに無料のソフトで頑張って作って、
人に見せたら笑われただけ、
のような悲しい現実が待っていたりします。
その間に他の人間にどんどん差をつけられて、
結局は挫折…
実は世の中、こんな人で
あふれているのは確かです。
 
抜きんでる人というのは、
自分の得手不得手をわかっている人だ
というのはよく昔から言われていることですが、
その不得手をバッサリと捨てて、
人に託すことの出来る人は確かに強いです。
どんどん前に進むことだけを
考えればいいんですからね。
 
 
音楽で言うなら、
昔みたいにシングルをリリースして
1週間でチャートに 入らなかったら
はいアウト、はい次!
みたいな時代ではないので、
 
形にした1曲1曲を大事にして、
時間を掛けて計画を練って、
しっかり予算を掛けて
世に問うてみることが大事です。
同じ曲であっても違うやり方なら
何度でも世に問うことが出来る。
 
 
これが出来るのは、
デジタルが進化したからです。
音楽に関して言えば、
少ない予算で何度だって
仕切り直すことが出来るんですから。
 
 
そのデジタル的な発想のひとつが
「本業+本業」という考え方なんだと思います。
まさにデジタル世代ならではの
合理的な発想だと言えますね。
 
とても面白い新しい動きだなと思って
僕は興味深く見ています。