作曲の極意

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音楽制作会社ネクスト・デザイン

 
 

 
 
 
 

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作詞の音楽理論


 

ただ歌詞を乗せればいいと思っていませんか?

 

作詞のメカニズム

 
作詞の準備

 

作詞に理論的なアプローチは必要なのでしょうか?

答えは…必要です。ものすごく大事です。
 

音楽的な理論をしっかり踏まえた上で作曲した方が、より良い曲を生み出せるのと同じです。
 

 
作詞は魔物である。



作詞というものは音楽において最も入りやすい分野に思われがちです。特殊な機材も必要ないですし、楽器さえなくても紙とペンがあれば出来てしまいますからね。

だからこそ、作詞は魔物だとも言えます。
 
 
歌もメロディーもアレンジもサウンドも、作詞のせいで すべてが台無しになっている楽曲を多く見かけるからです。
 
しかもこのことは、
 
音楽制作すべてに精通している人間でなければなかなか気付くことが出来ない
 
という非常に悩ましいものです。


書きたいことを書く小説やエッセイとは性質が異なります。

ポエムとも違います。

あくまでも音楽という箱の中で言葉を音として奏でる必要があるのです。


作詞とはメロディーが放つ感情を表現するもの。
 
一言で言えばこうなります。


つまり、メロディーとは切っても切り離せないのが作詞と言えると思います。

これを守らないとまず間違いなくメロディーは死んでいき、歌は息絶え、サウンドは色あせていくでしょう。
 
 


 

理論と感性の両輪



ただ感覚だけでやみくもに作ったものでは、人の心を動かすことは出来ません。

しかしまた逆に、理論や理屈だけでも人の心は動かせません。

積み重ねた理論と、独自の感性とが合わさった時に、良い曲、人の心を動かす曲というものは生まれてくるのです。


理論と感性。
 

その両輪が合わさってこそ、なんです。
 
 
作詞においての理論とは「言語のメカニズムを知ること」
 
作詞においての感性とは「その言葉を選ぶセンス」
 
 
ということになります。
 
 
作曲で言えば、前者は音楽理論を知ることであり、後者は音を操るセンスということになりますね。
 
 

 

 


 

日本語のメカニズム

 

作詞に取りかかるその前に、必ず知っておかなければならないことがあります。


日本語という言語の特性についてです。




まず知っておくべきことは、


母音は「い・え・あ・お・う」の順に明るい



ということです。


つまり、「い」段が1番明るく強い響きなのです。


歌を立たせたい時は、頭を「い」段で始めてみるのです。



」「」とー

」ーまをー

」つめた「
 
 
この箇所がサビだと仮定して、なぜここに「い」段を投入するのか。
 
まず冒頭の「」「」はサビの小節頭になるので、やはりインパクトとして聴感上、「聴き手の耳に引っかけたい」意図があります。
 
次の「」は、ファルセット(裏声)に跳ぶ箇所だと仮定するなら、サビの最も聴かせたい「聴かせどころ」なので、ここは一番強く聴き手に印象付けたい。
 
次の「」つめた「」は、サビの「キメ」部分であり、作曲的には歌がテンション高く張り上げたり、あるいは歌の区切りとなるような帰結する箇所なので、その「キメ」となるような箇所に「い」段を当て込んでいるというわけです。
 
 
…とこのように、ただ言葉の意味そのまま「君といまを見つめたい」だけではないということを、作詞に取り組む人は認識しなければならないのです。
 


 

作曲家やクリエイターがハマる罠
-「歌詞にも音の強弱がある」という盲点

 
DTM

 
ピアノやギターを弾くときに一定の強さでは弾きません。必ず「強弱」の振幅があります。
 
曲を打ち込みで作っている人は、楽器の音を鳴らすときに「ベロシティー」で音の強弱を意識して曲を作っていきます。

歌詞も同じなのです。これは非常に盲点になっていることが多いです。
 
 
楽器は強く弾こう、弱く弾こうと思って弾きます。
 

でも作詞をする時に言葉の強弱まで考えている人は
どのくらいいるでしょうか?


音楽の大基本である音の「強弱」が、歌やメロディー、サウンドや言葉にゆらぎやうねりという心地よい振幅をもたらします。
 
 
特にボカロやAIシンガーを駆使して曲作りをされている人、あるいはピアノやギター、キーボードなど楽器を演奏して作曲されている人は要注意です。
 
「自分で歌わない」からハマってしまう罠があるのです。
 
自分で歌わないがゆえに、作詞が「歌詞の意味先行」になってしまい、音楽で最も大事な「音の強弱」すら意識の外になってしまう、という罠です。
 

 

シンガーソングライターがハマる罠

 
シンガーソングライター

 
例えばシンガーソングライターの人で、いや作詞なんてそんなのなんとなくだよ、という方がいらっしゃるとしたら、歌いながら心地よいと感じる歌詞を乗せていく過程で、すでに理にかなった言葉を乗せていっているはずです。
 
楽器で言えば、ピアノの音をポーンと実際に出しながら作曲をしているのと同じで、歌を実際に声帯で発声しながら「出音を確認している」状態なので、理にかなった作詞になる傾向が強いのです。
 
これは自分で作って歌うシンガーソングライターの特権みたいなものですが、シンガーソングライターにも弱点があります。
 
 
「歌のことしか考えていない歌詞」になりがちだという点です。
 
 
音楽というものは、様々な楽器が同時に鳴っていて、歌を支え、あるいは歌と共存し、時にハーモニーを成すものです。
 
「歌のことしか考えていない歌詞」の場合、ギターが強く主張する箇所なのに、歌も強く主張するようなことになりがちですし、楽曲の全体像としては「うるさい曲だな」で一蹴されてしまう可能性だってあります。
 
楽器群が歌を支えている箇所や、みんなが好きな美味しいコード感の箇所は、聴感上強い日本語を投入し、歌が際立つような歌詞を注ぎ込みます。
 
反対に、歌の起伏の谷となる部分や、楽器群が彩り豊かに主張している箇所は歌は一歩引いて、歌詞に聴感上弱い「う」段や「お」段を投入できないか考えるのです。
 
 
こうして、言葉の強弱をつけて、言葉の意味をつなげ、さらに言語感覚の優れたセンスのいい文章にしなければならないのが作詞なのです。
 
 
だから、 作詞は魔物だ…  というわけなのです。
 
 
実際、ミックスなどのエンジニアリングでは「い」段の言葉はさほど音量がないのに強く前に出てきますので、波形レベルで適度に聴こえ方を抑えたりします。
 

 

音量波形


 

「い」段は明るい。強い。

逆を言えば、連続して出てくるとうるさく、くどい響きになります。

ただそう覚えておくだけでも、作詞の音楽理論的アプローチの第一歩になると思います。



音を伸ばすところで強く響かせるのは うるさいから避けたいなと思う時は、「い」段を避けて他の段を持ってくる。


い ま で もー
「い」段「あ」段「え」段「お」段

最初は強く入って、強さが変化しつつ、最後は「お」段で柔らかく終わります。
 
 
 



濁点で音にアクセントを付ける

 
 

次に音の「強さ」という意味で、「い」段と同じくらい強力なのが「濁点」です。


がぎぐげご、ざじずぜぞ、だぢづでど、ばびぶべぼ…


これら濁点の言葉も音が強いです。
 
それゆえ、プロの作詞家は意図的にインパクトを持たせたい箇所に濁点をピンポイントで突っ込んできます。

シンガーソングライターも巧みに言葉のメカニズムを感覚でコントロールしてメロディーに乗せてきます。


 

ポップな「ぱぴぷぺぽ」



また、五十音の特別な行として

ぱぴぷぺぽ Pa Pi Pu Pe Po

があります。



小さい子どもが、なぜだか言いたくて仕方なくなるのが、この「ぱぴぷぺぽ」だと言われています。

大人になってからもキャッチーに感じたり、ポップに感じたりする響きです。



商品名などには意図的に「ぱぴぷぺぽ」が使われたりします。

ポッキー、プッチンプリン、ピクミン、プリクラ…

なんだか口にしてみたくなる響きですね。


これを作詞に応用すれば キャッチーな響きにしたり、ポップなフレーズにしたり出来るわけです。


 

ボーカルが作詞する時のよくある現象
-あ段の連続

 
ボーカル


ところで、ボーカリストが作詞をする時によくありがちなのが、歌詞のほとんど「あ」段だったなんてことがあります。
 
作曲や編曲の心得がないボーカルの場合、作曲やサウンドのことを考慮しない傾向が強いため、「歌っていて気持ちいいか」のみにフォーカスしてしまいがちなのです。
 
シンガーソングライターの場合は、作詞の際、歌いながらも作曲面のことを考慮するため、あまりこのようなことは起きにくいです。
 
 
あなたが
わからな
愛なんて言わな
ただ会いん
 
 
「あ」段が多すぎる…
 

それは「あ」段は口を開けて気持ちよく歌えるからなんです。ビブラートもかけやすい。だからついつい増えてしまう。
 

でも聴感上では単調な響きに聴き手は感じるでしょう。一般の多くの人はそれがなぜ単調だか理由がわからないと思います。
 
往々にして、
 
メロディーが良くない、アレンジが好きじゃない、歌声が好きじゃないという話になったりします。
 

でも実は曲の足を1番引っ張っているのが歌詞だということに気づける人は、もう音楽の世界でプロとして活躍している方かもしれません。
 


 

音楽を聴く人はもちろん五十音がどうだとか意識して聴くことはしません。だからこそ、作る側は意識的に強弱やゆらぎを作り出したり、聴き手のことを常に考えて作らなければいけないのです。


ここでは主に言葉の「強弱」について書かせて頂きました。
 
 
 


 

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